渡本電所 


所在地:静岡県静岡市葵区有東木 (マップコード:483 403 236)  Mapion

取 水:安倍川水系有東木沢川     放 流:有東木沢川

出 力: 24 kW

 

  

昭和10.4  運転開始[大河内電灯]

昭和17.4 移管[中部配電(株)]?

昭和25.4  廃止


水路

静岡市内から,安倍川に沿って北上する県道梅ヶ島昭和線(県道29号)

から分岐し,有東木(うとうぎ)集落へ上っていく道路沿いの斜面に

渡本発電所の水路跡がありました。

同日に行った有東木発電所の調査でお世話になったおじいさんから,

大体の位置は聞いていたのですが,なかなか見つけられずに何度か

付近を往復した末に,斜面の上方にようやく見つけました。

 

 

 

 

 

消える水路

上流に向かって水路を辿ると,やがて道路によって分断されています。

右からの水路と,道路の縁石がわかるでしょうか?

発電所廃止後に道路が新製されたようです。

 

 

 

 

 

 堰堤付近

水路の勾配から,堰堤があったと思われる辺りの写真です。

両岸,川底ともに改修されており,堰堤の形跡は見られません。

 

 

 

  

 

 

水車跡

水路の調査をいったん中断して発電所の遺構を探すことにし,

有東木沢川と安倍川の合流点付近で,近くにいた

おとうさんに聞いてみました。すると,合流点から有東木沢川の少し上流を指差し,

「あの辺りだよ。あそこはうちの地所だ。」 とのこと。

なんと発電所跡の土地を所有されている方でした。遺構を探していることを話すと,

「もう何も残っていないけど,土台はあるよ。」 と言って,現地を案内してくれました。

普段かぶせてあるシートをめくって,水車が据えられていた基礎部

を見せてくれました。

シートの下の穴は,水車を回した水が落ちるドラフト(吸出管)でした。

吸出管

吸出管の直径は約250mm 

穴の底の方は見えなかったのですが,おとうさんの話では底まで3〜4mは

あるようです。

 

 

 

 

 

 

軸受架台

現在はバイスの台に使われていますが,水車と発電機を繋ぐ軸を受ける

軸受けの台だったと思われます。

 

 

 

 

 

 

 

放水路

有東木沢川です。放水口がこの辺りにあったはずという

ことを聞きましたが,形跡は認められませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

水圧鉄管の方向水圧鉄管があったという方向です。

鉄管はほとんど撤去されているということでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上水槽

おとうさんにお礼を言って発電所跡を後にし,上水槽を

探索することにしました。

人だけが通れる旧道を登っていくと,水路の末端と上水槽が

見つかりました。

大きさは約2m×1m,深さは約2mです。

水槽の縁が一部低くなっているところが余水吐です。

しっかりと形を留めていました。

 

 

余水吐と排砂口

余水路

余水吐の下側には排砂口があります。

(写真左)

 

余水吐を越流した水や,排砂門から排出された

土砂は,余水路から川に排出されました。

(写真右)

余水路は現在は道路で寸断されており,

川までは到達していません。

 

 

 

水圧鉄管接続部

水圧鉄管アンカー水圧鉄管の接続部です。

鉄の格子が付いているのが見えます。

(写真左)

 

水槽から出た水圧鉄管は埋設されており,

地上から見ることができませんが,

鉄管を固定するアンカーブロックの一部が

見えます。

(写真右)

 

 

水圧鉄管

上水槽跡と発電所跡の間を,現在は道路が横切っています。

道路の下側の林の中に,水圧鉄管が一部残っていました。

直径は約250mmです。

皿のように広がった接続部が特徴的です。

これは,明治〜大正にかけて一部で用いられた長尺鉄管の接続方式である

ダイヤフラム接続(弾膜接続)方式です。温度変化による鉄管の収縮を 

ダイヤフラムで吸収しようとするものですが,ダイヤフラムには降伏点を超える

応力が発生することがあり,クラックの発生や鋲からの漏水が生じたりするので, 

使用例は少ないようです。

 

 

発電所跡

水圧鉄管がある場所から下方を見ると,発電所跡が見えました。

黒いマットがあるところが水車のあった場所です。

 

私有地の中にある発電所の跡を,所有する方のご好意で

見ることができ,貴重な記録とすることができました。

 

(調査日:2008.4.12)  

 

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